タイトル
「馬鹿なっ!」
「正気ですかっ!」
火影が召集した長老会議。
そこで出された火影からの提案に、諸所から驚愕の叫びが放たれた。
「アレが何かわかって言っておいでなのか!?」
「ああ、わかっている」
火影・・・ツナデは、美しい顔に微笑をのせた。
「では、それの危険性はおわかりでしょうに!」
「上忍に昇格させたのでさえ、破格の処遇!これ以上はなりませぬ!」
「私は反対させていただく!おそらくここにおられる方、皆同意してくださるだろう!」
促され、長老会の面々が次々に頷いていく。
「お前たちこそ、何か勘違いしていないか?私は『わかっている』と言ったよ」
火影の椅子に長い足を組んで座ったツナデは、細い指先で肘掛を叩く。
「では・・っ」
「アレは・・次期火影、『うずまきナルト』それ以外の何者でも無い」
「「「「「!!!!!!」」」」」
絶句した長老たちを、ツナデは楽しそうに睥睨する。
「た・・・誑かされましたかっ!?」
一人の老爺の言葉に、ツナデは大きく目を見開き・・・けたたましく笑い声をたてた。
「あははっ!まさかそんなことを言われるとはね!全く、愚かさもここに極まれり」
「!?」
「誑かされたからと言って、無能な者に私は火影の座を譲ったりはしない。その程度の覚悟で座れる椅子
では無い。この火影の椅子は・・・そんなこともお忘れになったのか、あなた方は?」
「それはっ」
「それがわかっておられるならば、その指名は到底受け入れられるものではないことはおわかりでしょう!」
ツナデは額を押さえ、はぁと深く溜息を吐く。
「全く・・・あなた方の心配は何だ?九尾の顕現か?」
「無論のこと!」
「もし、九尾が復活し、それが火影と知れればどのような不利な立場におかれるとお思いか!」
「今度こそ、木の葉は復旧できぬほどの痛手を受けることになろう!」
「黙れ」
勢いづいてまくしたてる長老たちに、ツナデの冷たい言葉が突き刺さる。
「物心もつかぬ赤子一人に九尾を押し付け、ぬくぬくと生きてきたお前たちにそれを言う権利があると
思っているのか?思い上がるのもほどほどにしておけっ!」
「・・・っ!!」
「本来なら、英雄として尊敬されるべき存在だったにも関わらず、無用無知な恐れを絶つことなく見て見ぬ
ふりをし、里人に迫害され続けるナルトをそのままにした」
幾人かが、ツナデの苛烈な視線にうつむく。
「しかし、それは故なきことでは無い。九尾があの者の中で生きているのは真実!」
「だからどうした?」
「どうしたとはっ!」
「いつ復活するかわからぬと!」
「つまり、あなた方は4代目の封印と私の火影としての判断が信じられないということだな?」
「・・・。・・・」
沈黙。それが何よりもの肯定である。
「ふん・・・無駄なことだったね」
「は?」
ぼそりと呟いたツナデの言葉の意味がわからない。
「私はね、本当は長老会なんて開くつもりは無かったんだ」
「はっ!?」
「どうせ反対するのは目に見えている。だから無視するつもりだった」
にっと口角を上げる。
「何を・・っ!?」
「あんたたちは認めないだろうけどね。『うずまきナルト』は実質的にはもうすでに火影だ」
「五代目?」
ツナデの手には、いつの間にか一本の巻物が乗っていた。
それを勢いよく開いてみせる。
「『我ら、うずまきナルトに忠誠を誓い、唯一の命に従う』・・・中忍たちの血判状だ」
巻物にはずらりと中忍の名が並び、それぞれの下に血判が押してある。
これはナルトが用意させたものでは無い。
中忍たちが、ツナデに自分たちの意思を宣言するために用意したもの。
彼等はすでに、五代目火影のツナデの命ではなく、ナルトの命でしか動かない。
「中忍風情が何を言おうと関係ないっ!」
「言っておくが、上忍、特忍とも私の決定に否やは無いとの決定が届いている」
「!?」
つまり、ナルトを火影に選出することに反対するのは、長老会のメンバーのみ。
「ようやくわかったかい?私がこの長老会を招集したのは、ただ形式に過ぎない。ここでどんな結論が
出ようとも、ナルトが六代目となることは決定している・・・ねぇ、ナルト?」
「「「「!?」」」
「ま、そういうこと」
背後の声に振り向いた瞬間、立ち上がっていた幾人かの者たちの首が飛んだ――― 文字通り。
あまりの切れ味の鋭さに、血飛沫さえ飛ばない。
驚愕の表情のままの首が、床に転がる。
「抜忍には死を・・・ならば、他里と通じていた裏切者も同様だろう?」
美しい微笑に、凍りつく。
「それはそうだけど、もう少し穏便に済ませてもらいたかったね」
「それは、すまなかったな」
文句を言うツナデに、ナルトは全く悪びれる風なく肩をすくめ、近づいていく。
人々は圧倒的な存在感に、ただ、圧される。
誰よりも深い闇を背負いながら、誰よりも強く輝くチャクラを身に纏う。
「うずまきナルト、この者を六代目火影とする。異存は無いな」
ツナデの言葉に、反論はかえらなかった。
二日後、里中に六代目火影就任の報が知らされる。
また、他里においても細作によって速文がもたらされた。
最年少の六代目火影は、若干17歳の少年。
その名は。
『うずまきナルト』
木の葉において、否 ――― 忍の歴史において、最強の『忍』と記される火影の誕生である。