Never Ending Story 1.ホビット


 ホビット。
 彼等は不思議な生き物だった。
 エルフほど華々しく伝説に登場するわけでもなく、何か特異な能力があるわけでもない。
 成人でも人の半分ほどの背しかなく、己の住んでいるところから外界に出てくることも滅多に無い。
 ゆえにその存在はエルフよりも珍しいものだった。
 だが、それでもエルフ以上に注目されることは無い。
 彼等の風貌は至って平凡、素朴。まさに彼等の生き様そのままに。
 『ホビット』という種族は、小さくて牧歌的。それ以上に彼等を深く語るものは無かった。

「彼等は取るに足らぬ小さき者のように思える。だが、とても興味深い。知れば知るほど惹き付けられる。
 彼等は驚異的に不思議な生き物だよ」
 灰色の魔法使い、ガンダルフは、和やかな表情を浮かべてホビットについて語った。
「彼等は聡明というわけでも無く、外界の者から見れば愚かに見えることもあるかもしれない。だが、彼等は 物事の本質を知っておる。本能で理解してるのじゃ。そんなことが出来る者が果たしてこの世界に幾人おる ことだろう。彼等はとてつもなく純粋で素晴らしい生き物だよ」
 そう語り、楽しげに頷いてみせる。
 この魔法使いがここまで感情を表に出すことも珍しい。
 それだけに、彼にとり『ホビット』という存在は特別なものなのだろう。

「それほどに素晴らしい存在ならば是非とも、私も会ってみたいものですね」

 共に馬を歩ませていた人物が言った。
 彼はエルフでも魔法使いでもない。限りある命を持つ人の子だった。
 格好こそは粗末であったが、立派な体格で、瞳には強い意志が伺えた。

「ほっほ……彼等にとり『大きい人』…我らはなれぬ存在だからな。怖がらせぬように気をつけねばならんよ。
 もっとも彼等の好奇心は強い。すぐに受け入れてくれるだろうが。そう…いつか、必ず出会うことになろう。 そなたの運命に関わるか、そなたがホビットの運命に関わるか……儂にはわからぬがな」
「それは予言ですか?」
「さて……予感、かのう」
 ガンダルフが不思議な微笑を浮かべた。




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