Friend


 最初の印象は、お世辞にも良いとは言いがたかった。
 三人、お互いに。



「だって、シーナ。僕が話しかけても全然聞いてなくて口説くのに一生懸命だったじゃないか。 あれほど完全に無視されたのは初めてだったから一種驚きだった」
「は?そんなことあったか?」
「これだもの」
 ダナはくすくすと笑い、ルックに酷いよねと同意を求めた。
「つまり今と少しも変わっていないっていうことだろ」
「な・・・っ」
「あははっ、そうかもね」
「ダナ!あのときは、まぁお前の顔見て無かったし・・」
「シーナ、それ全然言い訳になってないよ」
 ダナは笑う。
 しかも顔を見ていたら違っただろうか?

 
 場所は新同盟軍の城の中にあるレストラン。
 何となく手持ち無沙汰にふらりと別々に現れた三人はいつの間には一つのテーブルで昔の話に花を咲かせていた。
 まるで老人の集いだ。


「でもルックも酷かったよね。いきなりモンスターと戦わせようとしたし」
「あれはっ・・・またくだんない帝国の奴らが来たと思ったからね」
「うわーひでぇー」
「あんたに言われたくないよ」
 自分のことは棚にあげたシーナにルックの鋭い視線が突き刺さった。
 言い合う二人を見て、ダナはまたくすくすと笑った。

「ねぇ、二人は僕のことどう思った?」

「くそ真面目そーな奴」
「頼りなさそうなお坊ちゃん」
 間髪なく返された二人の言葉。
 どちらもあまり褒め言葉とはいえない。
「ひどいな~」
 ダナは笑った。
 だが、ダナがシーナやルックと出会った頃のイメージは本当にそんな感じだった。
 まだ、その手に宿る紋章の真の意味も・・・これから待ち受ける未来の辛さも知らなかったから。

 今のダナの印象とは全然違う。
 今のダナは独特のカリスマに溢れ、どこか危うさを感じさせながらもここぞという時にはとても 頼りになると信じさせるリーダーだ。
 言っては悪いがこの同盟軍軍主のローラントよりは余程人望があるだろう。

「二人とも昔から容赦ないよね」
「お前に遠慮してどうすんだよ」
「そうそう、君なんかにはこのくらいがちょうどいいんだよ」
 ポジティブに見えてネガティブなダナには、気遣うほうがマイナスに働くと二人とも知っていた。
 だからダナも二人の前では昔のように、少なくとも本人はそう思って笑うことが出来る。
 もっともそれもシーナとルックに言わせると、まだまだ猫をかぶっている状態だと言うが・・・。

「僕ね、同盟軍に来て良かったと思うことがいくつかあるんだけど」
「「何?」」
 二人同時の問いかけにダナはにこり、と笑った。


「大事な友人二人と再会できたこと」


「「・・・・・・。・・・・・・」」
 ルックとシーナは無言で顔を覆った。