Do you love me?


 本日も本日とて、戦を放っていざトラン。
 軍主の日課とすでに化している、行事である。
 災難なのは、それに付き合わされる運の無い仲間たち。
 今回の生贄・・いや、選ばれたのは、フッチにサスケ、ルックにフリックである。
 これはかなりの頻度で組まれることの多いパーティでもあった。

「しかし、何でお前はそう毎日、あいつに会いに行くんだ」
 うんざりした様子のフリックに、ローラントは明朗に答えた。
「それはもちろん!マクドールさんに会いたいからですっ!」
「・・・・・・・・」
「他人の迷惑なんて全然考えない、馬鹿」
 ぼそりと辛辣な言葉をかけるのは、後列のルックである。
 フッチにサスケはハイキング気分で楽しんでいるのか・・・諦めているのか、文句は無い。
「それに今日こそは確かめておきたいことがあるんです!」
「確かめたいこと?」
「どうせくだらないことだろ」
「到着するまで秘密ですっ!えへ。」
 照れ隠しに、振られたトンファーが襲い掛かろうとしたモンスターを一撃で葬る。
 さすがに毎日、バナー峠のモンスターを開いてにしているせいか、攻撃力は確実にアップしている。
 はぁ、と苦労人フリックは、大きな溜息をついた。








 グレッグミンスターの中心部より少し外れた閑静な屋敷街にマクドール邸は建っている。
 広大な敷地に建つ壮麗な屋敷は、何度訪れても気後れするほどに立派だった。
 そこにやっとのことで辿りついた一行は、門扉を叩いた。

「はい、はーい!」
 屋敷の雰囲気に似合わぬ軽い返事で出迎えるのは、エプロン姿のグレミオ。
「おはようございますっ、グレミオさんっ!」
「おはようございます、ローラント君。皆さんもいらっしゃい」
 辺りは一瞬、ほのぼの空気に包まれる。
「マクドールさんはいらっしゃいますか?」
「ええ、いらっしゃいますよ。どうぞ、中へ」
「お邪魔しまーすっ!」
 マクドール邸は玄関を通って中に入ると、まず広間があり、正面には優美な曲線を描く螺旋階段が上へと伸びている。
 そこに屋敷の主、ダナ=マクドールの姿があった。
「いらっしゃい。毎日大変だね」
 後半のセリフは明らかに軍主の後ろにいる者たちに向けられていた。
「マクドールさん!おはようございますっ!」
 犬さながらに喜色を浮べ、勢いよく見えない尻尾を振ってダナへと駆け寄る。
「今日も早いね。いつ向こうを発ったんだい?」
 未だ時計は八時をまわっていない。
 普通に考えても同盟軍の本拠地がある場所からマクドール邸までは6時間はかかる。
「朝3時。薄暗いどころか、真っ暗な中の強行軍だ」
 げっそりした表情でフリックが答えた。
「それは、ご苦労様。よくルックが付き合ったね」
「いい加減にするように君から言ってくれない?」
 軍主の押しの強さ負けたらしい。
 ダナは微笑を浮かべると、朝食もまだらしい一行を食堂へ案内した。






「ところで、昨日も会ったばかりだというのにどうしたんだい?」
 ダナとしても昨夜ここに帰ったばかりでその翌朝に再びローラントと会うことになろうとは思ってもいなかったのだ。
「聞きたいことがあったんです!」
「聞きたいこと?」
 食後の紅茶を差し出すグレミオに礼を言いつつ受け取ったダナは首を傾げた。
「はい!実は・・・あの」
 言い出そうとしたローラントは服の裾を掴んでモジモジしている。
 正直、気味が悪い。
「ローラント?」


「マクドールさんはっ・・・ 僕のこと好きですかっ!?


 ぶぴゅっという音がして、フリックが紅茶を吹き出した。
 その前に座っていたフッチは情け無さそうな顔をして、ハンカチで顔を拭く。
「汚い、馬鹿」
「っだ・・・」
 一人慌てるフリックに、ルックの冷たい視線が突き刺さる。
「ローラント」
 言われた当人であるダナは慌てず騒がず、どうなのかと見つめてくるローラントににっこりと笑ってみせる。
「そういうことは、ギャラリーがあるところでは聞かないものだよ?」
「え!?そうなんですか・・・すみません」
「うん、だからその答えは二人だけの時にね」
 うつむいたローラントが、恐ろしい速さで起き上がり、目を輝かせる。
「はいっっ!!」
 にこにこ。
 にこにこ。


「「「「・・・・・・・。・・・・・・・」」」」


 (答える気、ないね・・・あれは)
 (ダナッ!あんなのと二人っきりになるなんてっ!)
 (ダナ様・・・僕もお聞きしていいですか!?)
 (俺、もう帰っていいか・・・?)



 その後、同盟領へトンボ帰りしたローラントは、シュウにこっぴどく叱られ、1週間城へ軟禁され、
 トランへ行くことを禁止されたらしい。