ピノキオ
これは夢なのだ。
そうわかっているのに、鼻は無情にもどんどん伸びていく。
非現実。
起こりうるはずのないもの。
だから、夢だとわかっているのに・・・・。
もういいっ!!
こうして知らしめて貰わずとも、僕はわかっている。誰よりも!
己が、嘘吐きであることなど。
数多の嘘で、人々の命を奪ってきた。
夢など見なくとも・・・わかっている。
・・・・それがどうした?
僕がいつかそれを言い訳したか?
正義であるなどと叫んだか?
ああ・・・これが言い訳か。
・・・馬鹿馬鹿しい。おとといこい。
僕はこの程度の夢で傷ついたりはしない。絶望したりはしない。
進むことをやめたりはしない。
この永久(とわ)にも似た命。尽きるときが来るまで、僕は嘘をつき続けるだろう。
そう、決めたのだから。
誓ったのだから。
ゆるやかに開かれた瞳は、見慣れた壁紙を視界に入れた。
グレッグミンスターの、己の家。
「・・・・・・・・」
ダナは右手を眼前に上げ、くっと口元を歪めた。
(まさかあんな夢を見るとは・・・僕も、大概諦めが悪い・・・)
鼻が伸びる。
御伽噺の主人公、ピノキオのように。
それが嘘の罰。
だが、その罰の何と優しいことか。
それだけで許して貰える程度の嘘など・・・可愛いものだ。
たわいもない子供の意地と同じだ。
反して。
己の嘘は・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ああ、やめやめ」
自虐はダナの趣味では無い。
己を責めたとて・・・・・・もう、許されることでも無いのだから。
ああ。
嘆息して、右手で顔を覆う。
(狂いそうだ――――)