After 2


 翌日、クラウドと入れ替わるように帰ってきたザックスはテーブルの上に置かれていたメモを手にとり、首を傾げた。

(……実家?てどこだよ)

「おいっセフィロスっ!またクラウド怒らせたなっ!!」
 セフィロスの部屋の扉を遠慮なく開け放ったザックスは、暢気に読書なんぞに興じている男を怒鳴った。
「うるさいぞ、ザックス」
「あほかーっ!うるさくもなるだろうがっ!いったいクラウドに何しやがった!?」
「ふ、クラウドは照れているだけだ。そのうち帰ってくるだろう」
「……っ。……」
 どうしてこうこの男は『オレ様』なのだろうか……。
「んなこと言ってるとなぁ、前みたいに半年ぐらい姿くらまされるぞ」
 ザックスはその時のことを思い出すたびに、絶望感に苛まれる。
 この『オレ様』と二人暮しだった半年間……悪夢のような半年間だった。
 ザックスとて初めの三日間でいっそ自分が家出したいと思った……がクラウドがいつ帰ってくるかもわからず耐え忍んだのだ。ソルジャーで無かったなら、間違いなく円形脱毛症が出来ていただろう。
 あんな日々を繰り返すのは嫌だ。絶対に嫌だ。
「オレは、クラウドを探してくる。怒らせたのはあんたでオレじゃねーし」
 しかし、『実家』とはいったいどこのことだ?
「お前は場所を知らんだろう」
「心当たりをしらみつぶしに探すさ・・・まさかニブルヘイムまでは帰ってねーと思うし」
 帰ったとしても今、あそこには何も無い。
「ふん、まぁせいぜい頑張ることだ」
「何だ?……クラウドの居場所わかってんのか?」
 ふ、とセフィロスが微笑を刻む。何でこう動作の一つ一つがムカつくのだろう。
「私とクラウドはリユニオンした仲。離れていても一心同体だ」
「気持ちわりー言い方すんな!」
 もしここにクラウドが居たなら間違いなくサンダガを降り注いでいたことだろう。
 いやアルテマウエポンで串刺しの刑かもしれない。
 だが、道理でセフィロスが妙に落ち着いている理由がわかった。
「……クラウドは近くに居るんだな?」
「何でお前に教えなければならん?」
「・・・っああ、もうこのエロ親父!もういいっ!オレは捜しに行く!一時は二人で愛の逃避行をした仲だかんな!クラウドの居そうなところの一つや二つ」
「愛の逃避行?……ただ単に神羅の犬に追いかけられてただけだろうが」
「やかましっ!元はといえばあんたがだなぁ……あーもう、いいや。これ言い出すとえんえん終わんねーからな!ま、とにかくオレは行く!じゃぁな!」
 バタンっ!と扉が砕けそうなほどに強く音をたてる。
 入ってくるときも騒がしければ出て行く時も騒がしい。

「ふむ」

 セフィロスは本を脇に置き、目を閉じた。