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『亜州黄龍伝奇』


‡ 治りました!


 秋生がインフルエンザにかかり早退したのは記憶に新しい。慌てふためいたセシリアに強制退去させられ、会社をボイコットしたビンセントが介護した。

「明日からは大学に行っても大丈夫だね」
 わざわざ屋敷まで連れてこられた医者にお墨付きをもらったのだ。
「いえしかし……」
 それでも納得しないのがビンセントである。いや、納得しないというよりは秋生が療養中で傍にベッタリと付き添い世話をすることに味をしめたのか。
「これ以上休んだら単位が貰えなくなって卒業できないよ」
 秋生の就職も遅くなる。
 東海公司に来てくれる確立も低くなる。
 それはビンセントにとって由々しき問題だ。
「……仕方ありませんね。ただ決して無理はなさいませんよう、体力が落ちていらっしゃいますから」
「うん、わかってるよ」
 そう秋生はいつだって、理解はしている。
 ただ周囲がその理解を越え、様々なトラブルが舞いこんでくるだけで。
「送迎はさせていただいてよろしいか?」
「送迎?そこまでしなくても……」
「念には念を。ミスター・工藤が完治されたとはいえインフルエンザの猛威は未だ続いておりますから」
 また患うかもしれないと、ビンセントは心配する。
「そんなに体は弱くないつもりなんだけどなあ」
 仕方ないかと納得してしまう秋生はだんだんビンセントの過保護に毒されてきていることに気がついていない。

 後日セシリアから盛大に罵られるのは言うまでも無い。

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