31. ウィルス (NARUTO)











 異端なもの。
 有害なもの。
 排除されるべきもの。

 正常な細胞を食い潰し、悪性なものへと変化させていく。
 まさに己こそ、そうだ・・・とナルトは思った。






「・・・隊長?」
 自分の微苦笑に反応した部下が不審な顔で声を掛けてくる。
 任務中に振り出した雨は止む気配はなく、それどころか強さを増していく。
 通常ならばチャクラの薄い膜で雨を凌ぐのだが、任務中、そんなことをすればみすみす敵にこちらの
 場所を知らせるだけ。
 自分たちに出来るのは茂みの中へ身を潜め、同じように気配を消した相手を見つけ出すこと。
 雨音と雨水は、厄介なものだ。
 もっとも天候に左右され、任務を遂行できないなど忍としては役立たずに等しい。
 厄介な状況の中でも任務を遂行させてこその”忍”。

「200メートル先、三時の方向に二人」
 雨音にかき消されるナルトのセリフを正確に受け取った部下が素早く姿を消す。
「500メートル後方、八時の方向に三人」
 ナルトの指示を仰ぐまでもなく、次々と忍びたちは動いていく。
 まるでナルトの手足のように・・・。

 彼等は木の葉の忍ではあるが、『ナルト』の”部下”だった。
 里の命令と同等に・・いや、それ以上にナルトの命令こそを至上とし、どんな命令でも遂行する。
 術を使って暗示をかけているわけではない。
 第一、彼等は初めからナルトに心酔していたわけでは無いのだから。
 中には九尾のことを知り、あからさまにナルトのことを忌避し、憎む忍さえ居た。
 それらがナルトに忠実になったのは、ひとえにナルトの実力と、どんな不利な状況でも任務を成功へと
 導いた強い意志。頑なな偏見はいつしか消えうせていた。


「ターゲット、全て処理しました」
「・・・了解」
 任務完了。
 
 雨に混じって、血の匂いがナルトの鼻をついた。











 侵食していく―――――



 ナルトという存在が。
 深く深く。




 










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