12. 人喰いの滝 (NARUTO/カカスレナル)
「はーい、今日の任務は川で洗濯〜。皆気張っていこう〜」 「「「・・・・・・・。・・・・・・・」」」 三時間近く遅れてやって来て、携えてきた任務が”ただの”『洗濯』。 カカシを見つめる下忍たちの目は据わりきっていた。 「さぁさぁ、たっくさんあるからさっさとしないと終わらないよ〜」 「それならさっさと来いってばよっ!」 「まったくだ」 「どうせ先生何もしないつもりでしょ」 ぶーぶーとそれぞれに文句を言いつつも山と積まれた(冗談でなく)洗濯を各自腕に抱えて川べりに 歩いていく。文句を言ってもやらねば終わらないのはこれまでのことで骨身に染みていた。 「あ、もう一つ言っておくけど。下流には行かないようにね〜」 カカシの口調はどこまでも明るい。 「えー、何でだってばよ〜」 何の気無しに尋ねながらもナルトのカカシに投げつける視線は殺気を帯びている。 「ちょっとね〜、滝があるんだ。それが危ないの」 「滝?」 「そんなのあったかしら?」 「うん。危ないから普段は立ち居入り禁止にしてある」 「「「だったらこんなところで洗濯させるなーっ!!」」」 三人の息はぴったりだ。 「・・・で、あの滝が例の滝か?」 ナルトが木の上のカカシに話かける。 もちろん、ナルトはちゃんと洗濯を続けている。文句を言いながら影分身が。 「そう。”人喰いの滝”てやつ」 「は。誰が名づけたか知らないが、馬鹿馬鹿しいネーミングだ」 ここ”人喰いの滝”は上忍の間では暗黙の了解で禁域とされている場所だった。 五年前には何でもない滝だったそこは、中忍、下忍、一部の上忍連中が忽然と姿を消す謎の事件が 多発してから立ち入り禁止区域となった。 理由としては、チャクラの制御が狂うせいなのだが。 「ちょっと磁場が狂ってるだけだろ」 「ナルトはそう言うけどね〜」 何でも無いようなことを言うナルトにカカシが苦笑する。 もっともマスクで隠れていて「したような」としかわからないが。その上、愛読書『イチャパラ』もちゃんと いつも通り、手に持っている。 「上忍でも、あそこはヤバイんだよ」 「無能だな」 ナルトはあっさり斬って捨てた。 カカシとしては笑うしかない。 「第一」 その笑いに何か不満だったらしいナルトが言葉を続ける。 「ん?」 「俺は何とも無かった」 「!?行ったの!?」 「ああ。だって自分の目で見ねーとわからねぇだろ」 「だからってねぇ・・・・相変わらず怖いもの知らずっていうか、無謀っていうか・・・何かあったらどうするの? 俺、悲しくて死んじゃうよ」 「死ね」 容赦ない。 「それに、俺があの程度でどうにかなるか」 それならばとっくに死んでいる。 「・・・・・・・・・」 「それに、あそこがあんなになったのは俺のせいでもあるし、な・・」 「え?」 ぽろりと漏らされたナルトのセリフにカカシが固まる。 すると、あからさまにナルトが決まり悪げにそっぽを向き、ぼそぼそと言い訳をはじめた。 「・・・ちょっとじっちゃんのところから拝借した禁術をさ、試してみたくて・・・あそこで使ったんだけどさ。 どーもうまく発動しすぎたみたいで・・・ま、普段人が近づかない場所だし、大丈夫だろうって思ったんだけどな・・・これだから近代化も良し悪しなんだ・・・ってばよv」 「・・・・・・・・・」 語尾だけ、いつものナルトに戻して誤魔化そうと試みている。 まさか『人喰いの滝』にそんな裏事情があったとは・・・・。 「ナルトってさ・・・・・」 「何だよ」 叱られると思ったのか、隣の木からカカシを見つめるナルトの口調がすねている。 「・・・けっこう・・・・トラブルメーカー、だよね・・・・」 「・・・・・・・。・・・・・・・・・・・しみじみ言ってんじゃねぇよ」 ぷっと、カカシが笑いを漏らした。 その後、陽が沈むまでに第七班は無事に任務を完了させたのだった。 |