● 愛情節 ●










 闇が広がる空。そこに星という宝石が煌いている。

「不思議だな。こうして見上げる星は向こうと全く変わらない」
 いや向こうよりもはっきりとその輝きは見ることが出来る。
「私は星の形なんて詳しく知らないから、向こうと同じように見える」
「こちらでは星辰と申します」
 傍らに居た浩瀚が同じように空を見上げていた。
「あちらの……輝く星を北辰と呼び天の中心であると言われています」
「天の中心か。そう言えばあちらにもそんな星があった気がする。浩瀚は星には詳しいのか?」
「人並みにでございます」
「人並みか」
 それでも色々と詳しいのだろうなと静かな横顔を見つめた。
 陽子が誰よりも何よりも信頼を寄せる男。よくわからないままに左遷した陽子を信じてくれていた。
 陽子の何が浩瀚に信じさせたのか未だにわからない。
「浩瀚。聞いてもいいか?」
「何でございましょう」
 浩瀚は静かに陽子を見つめていた。
「ずっと不思議だったんだ。何故浩瀚は私を信じてくれたのだろうと」
「それは……主上が、王で在られたからです」
 問答のようなことを言われ首を傾げる。
「右も左もわからない幼子のような私が王だったか?」
 浩瀚が微笑を浮かべた。
「右も左もわからない方が剣を取り、台輔を助けだされたのですか?」
「それは……勢いというか、延王に唆されたというか……」
 今考えてもあの時の陽子はまるで何かに導かれるように動いていた。
 とにかく景麒を救い出すということだけで頭がいっぱいだった。
 だから剣を持ち、そして血を流した。
「主上は自らの手で道を切り開かれた。私に王というものを教えて下さったのです」
 陽子が瞠目する。
 まさかそんな風に思われていたとは。
「停滞していた慶には主上という星の輝きが必要だったのです」
 陽子が王になったことで良くも悪くも色々なものが動き出した。
 そう、陽子を中心に。
「私が靖共の姦計に陥りましたのは偏に私が未熟だったということ。それがゆえに主上を惑わせたことは私の不徳でございます」
 言い切り、譲らない浩瀚にふと陽子は思い出した。
「そう言えば遠甫がいつか言っていたんだ。浩瀚は頑固だと」
「……さようでございますか」
 さすがに師にあたる遠甫の言葉に浩瀚も言いよどむ。
 陽子はそんな珍しい浩瀚の様子に笑みを浮かべた。
「そんな頑固者の浩瀚に信じて貰えたことが私は嬉しい」
「主上」
 陽子に正対した浩瀚が拱手する。
「私は陽子様という王を戴いたことを至上の喜びであると……」
 そっと浩瀚に手を伸ばして言葉を止めた陽子は天を仰ぐ。
「……ずっとそう思って貰えるように頑張るよ」


 星降る夜に、陽子は誓った。











あれ・・・・・・何か全然色っぽくないな・・・・・まあ、それがうちの陽子だ!(・・・)