お悩み相談室


++劉麒++





本日のお客様は、柳北国劉台輔です。
近頃のお悩みは何ですか?









「いきなり、何ですか?忙しいので、失礼します」

       ああ、お待ち下さい!
       そこを何とか。是非に伺って参れ、と我が主上が。

「主上?どこの主上ですか?・・・他国のことにまで口を出すとなると・・・」
 怜悧な美貌の少年が目を細めると、ぞくっとするような寒気が致します。お〜恐っ!


 劉麒は紙の束を腕に抱いてしばらく躊躇すると、小さくため息をついた。
「悩みなど・・・全て私の至らなさが招いたことです。誰に何を申し上げようと己で解決せねばならぬこと。・・・分かち合えば負担も減る?」
 軽蔑するような微笑を浮かべた。
「そのようなものまやかしに過ぎません。愚かなことです」
 ぴしゃりと断言した。

       お寂しくはありませんか?

「・・・っそのようなもの。どこかの成長しきれぬ麒麟に問われればよろしかろう。私にはそのような感傷に浸っている暇などございませんから」
 もうよろしいですか、と踵を返そうとする劉麒に、言付かったものを手渡した。
「これは・・・?」

       『四葉のクローバー』と申す品物にございます。もっとも、それは主上のお手製にございますが。

「・・・・・・・」
 布製の、掌に乗るほどの四枚葉の小物。手製と言うだけあって、縫製の跡が何とも素人臭く歪んでいたり均一ではない。およそ子供でもこのようなよくわからないものを貰って喜んだりはしないだろう。

     それには由来がございまして。四枚の葉を持つ『クローバー』とやらは希なるもので、それを見つけたものには幸福を招くのだそうです。

「・・・・・・っ」
 湧き上がった衝動に、手の中のものを握りつぶそしそうになる。
 幸せに?・・・・だと。

        ではこのあたりで、御前を失礼致します。
















(今さら、このようなものを・・・)

 握り締めたそれを、放すこともできず劉麒は眉間に皺を寄せ苦鳴を漏らす。
 その姿は、氷の麒麟と揶揄される姿からはほど遠く・・・もし見る者があれば別人かとも思っただろう。
 
 悩みなど。
 ずっと知らぬふりをしていた癖に、何故今更手を差し伸べるような真似をするのか。
 いっそ無視していてくれれば良かろうに。
 いったい何を考えているのか・・・・

 その内心こそが、悩みである。













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『繚乱百鬼 清光の一刃』にちょこっと出てきた劉麒です。
実は、密かに劉麒は塙麒が嫌いです。
この劉麒がメインのお話も書いてみたいものです。