お悩み相談室


++泰麒++





本日のお客様は、泰台輔です。
近頃のお悩みは何ですか?









 悩み、ですか?
 ・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 それはもう、尽きせぬほどにありますが・・・・。
 え?簡潔にわかりやすく?
 ・・・・・・・・・本当に聞く気があるんですか?
 まぁ、いいでしょう。
 そうですね、強いてあげるならばやはり主上のことでしょうか。
 胎果のお生まれである主上は建国よりそれはご苦労をされ、慶を治めて参られました。
 慶と女王は相性が悪いと言われる中でも努力を惜しまず民のために尽くされる姿に私は感動を覚えた
ものです。・・・・・それのどこが悩みなのか、と?
 ええ、確かにそれだけならば私も悩みなどいたしません。
 我が主上は、少々・・・疎いと申しましょうか、鈍いと申し上げましょうか・・・余計なところでは察しが
良すぎるほどに良いのですが、肝心のご自身のことに関してあまりに無頓着すぎるのです。
 ・・・例えば?
 そうですね・・・まずは、隣国の希代の名君と呼ばれている方がおられますが、我が主上は建国の
おりに手助けをしていただいた縁で非常に親しくさせていただいておりますが・・・いくら王といえども、
男性と女性。互いに一歩引いてしかるべきだと私は思うのです。
 ところが主上ときたら・・・相手にそそのかさ・・・あ、いえごほんっ・・・まぁ誘われたからといって緑柱の
立つ館に出むき、あまつさえそこに『馴染み』とやらを作って帰られる始末!
 それ以外にも、執務中に顔を出した相手に誘われ政務もそこそこに、やれ柳だやれ芳だ、と全く危険
極まりない、王が不在である国にひょこひょこ顔をだし、しかも必ず何か騒動を引き起こして帰っていらっしゃるのです!!!!
 主上は何も仰いませんが!!私は使令より聞き、幾度寿命が縮む思いをしたことか!!
 賊に捕まったのなら、使令もおりますし逃げ出すことくらいその腕をもってすれば容易いことでしょうに
その賊の首領と意気投合し、先頭をきって謀反に参加するなど・・・ありえませんっ!!


 ・・・・・・・・・・・・・・・失礼、少々眩暈がいたしました。


 まぁ、とにかく我が主上は全く、お元気すぎるほどにお元気で、隙さえあればこのようにあちらこちらと
飛び回り、息つく暇もないと申し上げてよいでしょう。
 先ほども、禁軍の詰所に言ってくると嬉々とした表情で水禺刀を背に構えて意気揚々とお出かけに
なっしまい・・・・はぁぁぁ・・・・・確かに御身を守るためにもある程度の剣の腕も必要であると、譲歩いたし
ましょう。しかし、しかしです!

 『今日も桓魋と一緒に兵たちを鍛えたやったんだが、皆なかなか腕を上げてきた。私もおちおちしていら
れないので、これから延王に稽古をつけていただきに行こうと思う』

 ・・・・・・・・・・・・・。
 何故、何故御身を守るべき禁軍よりも主上のほうがお強いのですか!?
 鍛えすぎでしょう!?これ以上何をどう強くなると仰るのですっ!!!

 景麒は額を手で押さえ、何かを胸の奥へ押さえ込んだ。

 ・・・・・それも、ただひ弱であるよりは良いといたしましょう。
 ですが、そのせいか元よりの性格であられるのか・・・宮中に士官する女性に、主上は大変に人気が
あるのです。先日も主上に声を掛けられ、笑顔を向けられた奚が恍惚とした表情を浮べ、主上が立ち
去るのをそれはうっとりした顔で見送っていたのです。
 更にその上!!

 『全く・・・私の周りの女官たちは皆、美人で可愛らしく賢い娘たちばかりで、私などの世話をさせるのが申しわけなくてならない。いつまで経っても不甲斐ない私のせいで、ろくに衣服を整えることもできず朝服ば
かり。そんな私に嫌な顔もせずに付き合ってくれる。だが、どうか私のかわりに皆が極上の華やぎを体現
してくれるといい。美しいものが美しい姿をするのは、目に楽しく、何よりの薬となるからな。私もあなた方
の美しい姿に日々疲れを癒されているのだ』

 その言葉に感動した女官たちの隙をつき、主上はまんまと金波宮より逃走されたのです!!
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 ・・・そんな女官たちには『主上番』というのが密かにあるようで、毎日その番を得るために熾烈な戦い
が繰り広げられているそうです・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。








(主上       
「どうした、班渠?」
(台輔が・・・)
「景麒が?・・・・また露台で雲海に向かって独り言でも言ってるのか?」
(・・・・はい)
「放っておけ。あれもあいつの趣味みたいなもんだからな。慈悲の麒麟でもたまには愚痴りたくなることも
あるんだろ。あいつ妙なところでプライド高いから、そんなところを他人に見られたくないんだろう。そっと
しておいてやれ」
(・・・・御意)
 そもそもの原因は、目の前の鮮烈なる主に全てがあるのだが、賢明な使令は口を噤み項垂れた。






 今日も慶の主従は思いっきり擦れ違いながらも、前進中です。











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赤楽100年以上経って、ぐらいでしょうかね・・(笑)