仮想戯話

Ver.慶国(景麒尚隆)









 黒髪長髪、妙に古めかしい服を着た不審者が目の前に現れた!

 ――― その名を景麒、と言う。






「なあ、怖いだろう?そんな奴がいきなり目の前に現れて、俺の唯一、とか。俺の運命とか……それ以外にも理解不能なことを次々口にするんだ。顔が多少いいだけに胡散臭いことこの上なかったし。いかにも何か企んでるって目をしていたし、もう存在そのものが怪しい、私が一目散に逃げようとしたのも無理が無いと思わないか?」
「……そうだな」
 突然やってきたと思ったら怒涛のごとく文句を言い始めた陽子に楽俊は遠い目をした。
「それなのに私のことを酷いだとか冷たいだとか言いやがるんだ!」
「やがる……お前会う度に言葉遣いが荒くなってないか?」
「それくらい私は荒ぶっているんだっ!!」
「……」
 きっとまた景麒と喧嘩して金波宮を飛び出してきたんだろうなと楽俊は推測する。いや推測するまでも無いが。
 こうして陽子が雁国に居る楽俊の元にくるものかれこれ5回、6回、いや……7回目だったか。
 最近数えるのが馬鹿らしくなってきた。
「それで、今日はどうしたんだ?」
「やめろって言っているのにっ景麒が私の牀榻に忍び込んでくるんだっ!!」
「…………………………」
「何か言ってくれ、楽俊。そんな微妙な表情をされても困るんだが」
「お前がおいらが困るようなことを言うからだ」
「心配しなくても色気があるような話じゃない。潜り込んできた景麒の図体がでかくて邪魔だってことを言いたいんだ」
「邪魔……」
「だからいつも班渠とかに言いつけて雲海に捨ててきて貰うんだが」
「ちょっと待て」
「何?ああ、景麒は無駄に丈夫だから雲海に投げ捨てたくらいではすぐに舞い戻ってくる。今度から黄海にお願いしようと考えているけど……玄君から文句がくるかもしれないから検討中だ」
「……。……」
 色々問い質したいことが満載な陽子の話に楽俊は鎮痛な面持ちで短い手を額に当てた。
「幾ら麒麟が王の傍を離れず近いほど長生きする生き物だと言っても限度があるだろう?だから私はせめて同じ房室で我慢しろと妥協案を出してやったのに……あいつときたら!」

 ――― 陽子は冷たい。俺は陽子の傍に無ければ夜も日も明けぬというに

「どこが冷たいっ!?こんなにも私は歩み寄っているというのに!だから私はあいつを放り捨てるよりも先に私が飛び出してきたんだ」
「……。……」
 再び突っ込みどころ満載な陽子の言葉に楽俊はどうしたものかと考える。
 まず第一に。
 麒麟が王の傍に居れば長生きするなんて初耳だということ。
 いや、もしかすると楽俊が知らないだけでその界隈では有名なのかも……いや、違うな。絶対。
 第二に。
 同じ牀榻は駄目でも同じ房室はいいのいか、ということ。
 そこまで許容できるならもういっそのこと同じ牀榻では良いのでは無いのか。
 そして第三に。



 これ――――― ただの痴話喧嘩だろ?ということ。



 仲良くやっていることを喜べばいいのか。
 楽俊は悩む。

 言いたいだけ吐き出して満足した陽子は楽俊とお茶をして落ち着き、まるで陽子が落ち着くのを待っていたかのように現れた景麒に回収された。



















色々と陽子は景麒尚隆に騙されていると思います。百年後ぐらいに気づいて再び喧嘩するといいと思います(笑)

拍手で魔王いただきました!(笑)
更新できていないのにいつも拍手ありがとうございます!
拍手いただく度に「忘れてないから、頑張れよ」と言われている気がして「頑張るよ!」と思います。