春宵
‐しゅんしょう‐
11



【ATTENTION!!】
とってもパラレルです。
陽子が高校生です。一応。でも最強です(は?)
陽子を今の設定で高校生にしてみたかったんです!
ちょっとした出来心だったんです・・・・・・

以上。






 婚約者が居ると知らされたのは中学を卒業し、高校に入学する前のことだった。


「これは決定では無いのだけれど……」
 お茶にしようと誘われた席でのことだった。
 そんな切り出し方で始まった話は陽子が目を瞬くようなものだった。
 しかし意外でもない。ただ自分にもそういうのが居るのだなあと驚きだっただけだ。
「陽子が嫌だというのなら速攻でお断りするから。そこは安心していいよ!陽子はうちから離れるの嫌だよね。うん、いつまでもここに居てくれていいんだよ。何なら婿……うぅ、婿も要らないかな」
「別に私は構いません。どちらの方ですか?」
「っ本当に!無理矢理とかないからっ断っていいんだよっ!?」
 婚約者が居るといわれた陽子よりも、陽子に問題ないと言われた父親のほうが衝撃を受けているのは何故なのか。
「う~……」
「お父様……」
 娘を大好きすぎる父親は自分で決めたことなのに気に入らないのだ。
「聞いて気に入らなければ私が責任を持って断るよ」
「いえ、だから誰なんですか?」
 そんなに問題があるような相手なのか。
 いや、そんな相手を父親が陽子の婚約者に選ぶとは考えられない。
 気に入らないけれど能力的には評価している……そんなところか。さて誰があてまはるか。
「あー小松家の尚隆だ」
「え?あの方、まだ結婚していなかったのですか?」
「え……っぷっあははっ!陽子は尚隆のこといったい何歳だと思っているんだい?」
 父親が口にした名は陽子も知っているものだった。
 小松尚隆という人物の印象としては、いつも父親と対等に話し、自信に溢れている。
 陽子にも気さくに話しかけてくれて明るい印象はあるのだが……どこか底知れない得たいの知れなさも感じる。
 漂々として掴みどころが無い。
「え、いえ……何歳というか、若くは見えないというか」
「っく……はっはっはっ」
 陽子の言葉に父親が腹を抱えて笑う。
「はーっもう笑わせる」
 目じりに涙が滲んでいる。楽しんでいただけて何よりだ。
「はあ、あの子はあれでまだ23歳だよ。そっか……そんなに老けて見えるのか。今度教えてあげよう」
 尚隆を『あの子』呼ばわりする父親のほうが余程年齢不詳である。若く見えるのに、若僧と言われる雰囲気は無い。
 老成した雰囲気さえある。そう言えば陽子は父親の本当の年齢を聞いたことが無かった。
 尚隆は陽子との年の差は七歳、政略結婚としてはそうおかしい年齢差では無い。
「どう?やっぱり断ろうか」
「断っても、また別の相手を選ぶことになるのでは?」
 陽子に結婚しないという選択肢は無い。
「そんなこと無いよ。陽子がちゃんと愛する相手……もちろんちゃんと私の厳しい目で相手は見させてもらうけど」
 その厳しい目が普通の男では耐えられそうに無い。
「うん、陽子が選ぶ相手なら、私に不満は無いよ。そのくらい陽子のことを信じているからね」
「え、あ……そこまで信用されても、私に男を見る目があるかどうかは……」
「あるよ。変な男に引っかかるような陽子じゃない。どんな相手を陽子が見つけてくるのか待つのも楽しみかもしれない」
「……いえ、見つけてくるのが面倒なので、小松、さん、でいいです」
「面倒って!」
 父親がバンバンと机を叩いて笑う。
「婚約者なんて言い出した私が言うのもどうかと思うが、夢も希望も無いよ」
「結婚に夢も希望も抱いてません」
 あ、とつい吐露してしまった本音に陽子は両手で口を覆った。
 そんな陽子の頭を気にするな、と言うように父の手が撫でる。昔と同じ大きくて、優しい手が。
「確かに結婚に夢なんて無いかもしれない。それはある側面での真実でもある。でも希望はきっとあるよ」
「……」
 それは、陽子にはわからない。わからないから頷けない。
 でも父は一度も陽子に間違ったことを言ったことは無い。
 ……本当に希望などあるのだろうか。
「あーあ。陽子に断って欲しかったけど、いいよって了承の返事を伝えておくかな。まあ、本当に結婚するかどうかはまた別の話だから、嫌になったらいつでも言うんだよ?相手がもし浮気でもしたら即座に半殺しにするから」
「それはやめて下さい」
 父親なら本気で実行しそうだ。
「顔合わせに今度食事に呼ぶよ。顔は知っていてもあまり話したことは無かっただろう?」
「まあ、それは……」
 社交の場にまだ子供の陽子は頻繁に出入りしていない。
「うんうん、コミュニケーションは大事だよ」
「そう、ですね」
「どんなメニューにしようかな……あいつの嫌いなもの調べさせておくか」
 ぼそっと呟いた後半。父親は本当に相手を歓迎するつもりなのだろうか。嫌がらせでは?
 あ、そうだと父親が陽子を見る。
「小松君、来年から高等部の教師と剣道部の顧問するって言っていたよ」
「は……はあっ!?」
 父はひょいっと特大な爆弾を投げ込んでくれた。
 














どうやって婚約者になったのか。
あのパパが許すかなー
ちなみに陽子は剣道部です。