春宵
‐しゅんしょう‐
9



【ATTENTION!!】
とってもパラレルです。
陽子が高校生です。一応。でも最強です(は?)
陽子を今の設定で高校生にしてみたかったんです!
ちょっとした出来心だったんです・・・・・・

以上。






 もう前の名が何だったかも覚えていない。





「陽子」
「学校に居るときはせめて苗字で呼びませんか?」
「面倒だ」
 人気の無い廊下を歩いていた陽子の背中に声が掛かった。よくよく聞き知った耳慣れた声だ。
「小松先生」
「お前も俺を名で呼ぶといい」
「謹んで遠慮させていただきます」
 向き直ると部の顧問である小松尚隆が立っていた。見慣れたジャージ姿ではなく、教師らしいスーツである。
「何かご用ですか?」
「用が無くては声を掛けてはならんのか?」
 笑いながらそう言う男の顔を殴ってやりたいと陽子は思った。
「どうぞ遠慮なく声を掛けてくださって構いません。しかしお忙しい先生ですから、まさかただの暇つぶしに私などに声を掛けられることは無いだろうと思ったものですから」
 陽子の嫌味に尚隆は苦笑した。
「そういけずなことを言うな。悲しくなるだろう?」
 陽子は非常に疑わしい視線を向けた。
「……それで、本当に何ですか?休憩時間が終わってしまうんですが」
「これをやる」
「は?」
 両手のひらほどの小箱を投げてよこされる。
「バレンタインのお返しだ」
「あ……あーはい」
 そこで陽子はそう言えば、と一ヶ月前のバレンタインデーを思い出した。基本的に陽子にとってのバレンタインデーはチョコレートを貰う側で送る側では無い。必然的にホワイトデーも返す側になる。
 そんな陽子ではあるが、バレンタインでーを贈った相手が何人か居る。それが目の前の男だ。
 だがしかし。
「ありがとうございます。でもお返しはいりませんとお伝えしたはずですが?」
 陽子ほどでは無いが目の前の男もそれなりにもてる。貰っているチョコレート以外の諸々もあるだろうし、ホワイトデーに煩わせるのも悪かろうと渡すときにきっちりとその旨は伝えていたはずだ。
「ああ、聞いたな。だが俺が返したいのだから素直に受け取っておけ」
「はあ、それでは有り難く」
 定番のマシュマロか、チョコレートかキャンディーか。鈴や祥瓊たちと一緒にいただこう。
 陽子はそんな風に考えて軽く受け取った。
 だからその時の尚隆の何か企んでいるような顔を見逃してしまった。
 この男がそんな『当たり前』のものを渡すはずが無いというのに。







 今日のランチは天気も良いということで日当たりのいい中庭の東屋でいただくことになった。広い中庭には幾つかの東屋があるのだが陽子たちが占拠したのは一番小さな場所だった。多くて五人も入ればいっぱいだ。
「それは何?」
 昼食を食べ終えて徐に何かを取り出した陽子に鈴が尋ねる。
「バレンタインデーのお返しらしい。鈴と祥瓊と一緒に食べようと思って」
「「……。」」
 鈴と祥瓊が視線をかわして微妙な表情を浮かべた。
 高そうな包装をされた小箱に入る量は知れている。その箱に入っているとすれば一粒云百円以上するようなチョコレートしか想像できない。そんなものをお裾分けされてもいいのだろうか。
 そんな二人の危惧をよそに陽子は気にせずリボンを解いて小箱を開ける。と。

「あ」
「あ」
「あ」

 箱の中。
 そこに鎮座ましましていたものはチョコレートなどでは無かった。
 もちろんキャンディーでもマシュマロでも無い。

 そして陽子はそっと蓋を閉じた。













ホワイトデーが過ぎていた!!!
さて箱の中身は何だったのでしょうか(笑)