春宵
‐しゅんしょう‐



【ATTENTION!!】
とってもパラレルです。
陽子が高校生です。一応。でも最強です(は?)
陽子を今の設定で高校生にしてみたかったんです!
ちょっとした出来心だったんです・・・・・・

以上。







 スカートの裾を揺らしながら乙女たちが笑いさざめき、コンクリートの門を潜っていく。それぞれにグループを作る彼女たちは途切れることなく会話に花を咲かせていたが、ふと何かを見つけたのか足を止め、皆が同じ方向に顔を向けた。
 そこに居たのは、自分たちと同じ女子高生だ。教師でも無ければ評判のイケメンでもない。

「お姉さま……」
「お姉さまだわ。今日も素敵」

 その姿に頬を染めて囁きあう姿は女子高のノリであるが、ここは共学で男子の姿もある。そんな男たちを差し置いて何故頬を染めて夢見る眼差しを注がれているのか。
 少し赤みがかった長い髪を首の後ろで一つにくくり、歩く姿は姿勢正しく颯爽と風を切っていく。少女であるはずなのに少年のように凛々しく、けれど優美である。
 彼女の名は中嶋陽子。最高学年であり、剣道部に所属して部長を務めている。

「先輩っおはようございますっ!」
「ああ、おはよう」

 後輩が意を決して挨拶の声を掛けると、陽子の固かった表情が緩み、微笑とともに挨拶を返してくれる。それを見ていた周りから黄色い声が上がった。
 いつもの光景である。
 そう、ごく普通のいつものありふれた風景なのだ。

「おはよう、陽子。今日もモテモテね」

 陽子より少し背の低いお下げの髪型の女子がぽんと肩を叩いて声を掛けた。
「おはよう、鈴。何を言っているんだ?私なんかより鈴のほうがモテているだろうに。昨日も呼び出されたと聞いたけれど……大丈夫だったのか?」
「えーと、あれは違うわよ」
 鈴の目が一瞬遠くを見つめる。
 確かに鈴は呼び出された。しかしそれは鈴に用事があるのではなく陽子に、だ。高嶺の花である陽子より幾分か鈴のほうが近寄りやすい。そして陽子と親しい。そうなれば鈴を経由して陽子に何とか近寄ろうする者の何と多いこと。
「隠さなくても良いのに。鈴は可愛いからな」
「ちょっ」
 同級生に何の照れもなく『可愛い』と言ってしまう陽子はどこまでも本気だ。鈴を揶揄っている気持ちは無い。だから言われたほうが照れる。
「もし変な男に付き纏われているようならすぐに私に言ってくれ。何としてでも私が撃退するから」
「……ありがとう、でも大丈夫だから」
 男よりも男らしい。侠気溢れまくっている。そこが草食男子に慣れきった女子たちのハートをがっちり掴んだ。
「それなら良いが、鈴に何かあったら悔やんでも悔やみきれないからな。危ないと思ったらすぐに私に言ってくれ」
「わかったわ!わかったから……」
 それ以上を陽子にこんな公衆の面前で言われてしまったらそれこそ女子たちが怖い。そうでなくとも陽子と親しいということでやっかまれているのだから。
「ほら、さっさと教室に行くわよ」
「ああ」
 鈴に急かされて教室にたどり着いた陽子はそこでも芸能人を出待ちするように女子に囲まれて挨拶をされる。それもいつもの光景なので陽子はにこやかに挨拶をかわして教室に入ってく。
「おはよう、陽子」
「おはよう、祥瓊。今日は早いな」
 ちょっと据わった目で陽子に挨拶した知的美少女は、はあと溜息をひとつ零した。
「今日は生徒会の用事があったのよ」
「そうか、副会長も大変だな」
 お疲れ様と陽子が祥瓊を労わってくれるが、そもそも祥瓊が副会長なんてものになったのは陽子が原因だ。女子生徒たちの絶大な人気を誇っていた陽子は当然、次期会長候補としてその名が挙がっていた。しかし陽子は卒業する剣道部の前部長より部長を任されることになり、会長候補から外れることになった。この時点で祥瓊はすでに陽子の片腕となるべく副会長に立候補しており、やめるにやめられなくなっていた。
「陽子のところもそろそろ大会でしょ」
「ああ、今年は何処にも負けるつもりは無い」
 やる気は十分。士気も十分なのだろう。そして試合の応援席は凄いことになるだろうと……また増える生徒会の仕事に祥瓊は頭を抱える。
「本当に、お疲れ様」
 祥瓊の思いがわかりすぎるほどにわかった鈴からしみじみと言われてますます肩が下がるのだった。
 そこで担任が姿を現した。陽子が所属している剣道部の顧問もしている小松尚隆だ。細かいことは気にしない頼りがいのある良い先生である。気にしなさ過ぎて同僚からよく注意はされているようだが。












続きは、夏コミで無料配布する予定です。
それもちょっと知りきれトンボですが。
また需要があれば書く・・・・・・かもしれません。