■ 花いちもんめ ■









 その日、雁から慶に鸞が送られた。
 鸞は延王の声で、陽子とその場に居た浩瀚、景麒に歌った。



 『勝ってうれしいっ、は〜ないちもんめ!』



「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
 三人は、どう反応していいのかわからぬまま固まった。
「・・・・・主上、これはいったい・・・・」
「私に聞かれても・・・」
「はないちもんめ、というのは・・・・」
「・・・蓬莱での、子供の遊びの一つだったと思うんだが・・・」
 生憎、私はやったことが無いので詳しくは知らないと景麒へ答える。


 『・・というわけで国対抗、花いちもんめを開催することにした』


「「「は・・?」」」
 三人の疑問をよそに、鸞は延王の声で話し続ける。


 『対戦カードは抽選で決めるが、各国欲しいと思う人物をピックアップし、戦うこととなる。もちろん
  本当に戦うわけではない。あくまで”花いちもんめ”だ。戦う方法はいろいろあるが、誰もが平等に
  戦えるということで、ジャンケンとする。日程は、一月後の本日。場所は金波宮だ』




「「「はぁっ!?」」」



 『楽しみにしているぞ、陽子』


 鸞はそう言うと、口を閉じた。

「「「・・・・・・・・・。・・・・・・・・」」」
 それで、終わり・・・終わりなのか!?他に何か言うことはないのか!?
 だいたい何なのだ、突然に!しかも場所は金波宮!?こちらには何の相談もなしに決定かい!
 三人の頭の中に、怒涛のごとく文句が浮び・・・そして蒸発した。

「・・・・・・・浩瀚、景麒」
「「はい、主上」」
「延王の退屈の虫がまたぞろ疼き出されたようだ」
 はぁぁと陽子は深く深く息を吐いた。
 語りかけられた二人も『そのようですね』と諦めまじりに頷く。

 ・・・・今さら抵抗しても無駄だということは、身に染みて学習している。
 どうせ実行しなければならないというのなら、さっさと準備してさっさと終わらせるに限る。

「・・・また、迷惑をかけるな」
「いえ、主上。・・・主上のせいではございません」
 沈痛な面持ちの主に、同じく沈痛な面持ちの景麒が首を振る。
「近日中に雁より詳細が送られて参りましょう」
「延王が直接来られる可能性もあるな・・・」
「・・・・用意をしておきましょう」
 三人はちらりと視線を合わせ、再び深く深くため息をついた。











BACK